仕事で、あるアジャイルプロジェクトに関わってきた。
スクラムマスターとなり、初めてのアジャイルプロジェクトを進めてもう3ヶ月ほどになる。
今日、アジャイルのススメ方についてこれまでも指導をくれていた人から幾つか言葉をもらったので これまでの3ヶ月、これからのこと、アジャイルですすめることの本質とか考えてみたのでまとめる。
ちなみにこの人は僕の中ではマスターセンセイと呼んでいるので、以下同一人物。
無理はしない
アジャイルの根底にある本質を一言で表せと言われたらこの言葉になると思う。無理はしないというと消極的に思われるかもしれないので 足るを知ると言ってもいいかもしれない。自分たちに何ができて何ができないかをきちんと知ろうという姿勢はあるような気がする。 毎日のデイリースクラムに遅刻してくるメンバーがいたら彼が来られるようにしてあげるか、あるいは彼が来られる時間にしてあげるかだ。 もちろん無理はあってはいけないから彼が無理しなくては来られないのであれば前者はなしだ。プロジェクトを進める上で無理はあってはいけない。 それはリスクの増加につながるからだ。
「使うかもしれない」はきっと「使わない」
今考えられるユーザストーリとか、タスクとか。スクラムにあったら便利かもと思うようなツールとかスキーマとか。そういうものを 必要になっていないのに取り出しはじめるのは良くないということ。具体的に言おう。僕達は各タスクに「優先度シール」なるものを 貼っていたときがある。これはプロダクトバックログがまだ優先度順に並んでいなくてコンポーネントごとに貼り付けてしまっていたことが 原因だった。(つまり優先順位順に並べることができなかった)その中でも何を優先するべきかを表示するラベルを僕達は作った。そして捨てた。 もうユーザストーリリストごとにタスクをリストアップできるようになったからだ。それでも「優先度シール」あっても良かったかもしれない。 だっていつか「使うかもしれない」。またプロダクトバックログの順序がばらばらになる時がくるかもしれない。 悩んでいるとマスターセンセイは教えてくれた。
でもそれは捨てるべきなんだ。
必要になったらまた作ればいい。アジャイルというのは小回りを効かせるために身軽さを求めるものなのかもしれない。 プロジェクトのフレームワークに必要のなくなった「もの」は基本的にはその場から捨ててしまうのがいい。 アジャイルをすすめる前に決めたインセプションデッキの問いのひとつにはこんなものがある。
「なぜ僕たちはここにいるのか」
この「使うかもしれない」を増やしていくとこの問に答えづらくなっていってしまうんじゃないかな。と僕は思う。
ちなみにマスターセンセイは『トヨタの片付け』という本も紹介してくれた。
兼務はしない
1人が1度に抱えるタスクは最大で2つまでだ。これは『アジャイルな見積もりと計画づくり』の中で語られているデータにもとづいている。その中で語られていることはこうだ。
- マルチタスク化は生産性に甚大な悪影響を与える
- クラークとウィールライトによるマルチタスク化の研究で、個人が3つ以上の作業を並行して進めると、価値を生み出す作業に使える時間が大幅に減少することがわかった
- 2つの作業を変更に進めると、片方の作業が進められなくなったときに、もう片方の作業に切り替えることができるため、効率があがる
僕達はずっと兼務を続けていた。しかも兼務をしているにもかかわらずアジャイルの中でのタスク割り振りまで重複して行ってしまっていた。これはまずい。 これは理由はどうあれ効率が落ちるからだ。データが示している。タスクAとタスクBをこなす必要があるのであれば、必ずAの次にBだ(もちろんBの次にAでもいいが同時はダメだ) 本の中では2つのタスクは気分転換の意味もあり、少しではあるが10%ほど効率があがると書いてあるが、僕達はそもそもが兼務で集まったチームなのでダメだ。 人間は最大のパフォーマンスを発揮して且つ1度にできることは1つなのだと思う。マスターセンセイはこう言っていた。
僕達みたいな普通の人がマルチタスクで片手間に作ったものなんて大したものができないんだよ
非凡な才能溢れる人間でない限りは複数のことを1度に進めてはいけない。
おまじないなんてない
アジャイルで進めているプラクティスはどれもデータにもとづいて考えられたものだ。だからそこにおまじないはない。「どうしてこれをやっているんだろう」と思ったら それは調べるべきだ。きっと答えはある。僕達はバーンダウンチャートを書いていく上で正規のタスク見積もり線の上に3掛けした線をもう一本引いていた。 どうしてかって。僕達がお手本にしていたプロジェクトが行っていたからだ。でもその理由は知らない。さりげなくそのことについてマスターセンセイに聞いた。
上の線は本来はメンバーの持てるのすべての時間を表す。そこから7掛けして見積もり線を出せば各タスクのバッファを考えずにスプリント単位でずれを吸収してくれるんだよ
なるほど、そういうことだったのか。
ちなみにこの7割という数字も多くのプロジェクトを研究して出した数字らしい。
教訓:疑問に思ったら調べろ
まとめ
3ヶ月で何が分かるかというぐらいアジャイルは奥深い。けれど最後に書いたようにアジャイルスクラムは魔法のメソッドなんてものではなくて、自分で考え試行錯誤していかなくちゃいけないものだとわかった。
でもひとつ大事なことは、アジャイルには「無理をしない」という点で1つ筋が通っているような気がした。できるものはできないし、できないものはできない。そのことをなんとなしに言ってしまうのではなくきちんと計測可能な数値で考えることができるフレームワークがアジャイルスクラムなのだと思う。